住民税申告不要制度の廃止については、昨年12月の与党税制改正大綱発表から複数回取り上げました。
ライフプラン狂わせる「配当控除改悪」炎上の真相:本当に「岸田増税」なのか?
実は先送りされてなかった「金融所得増税」(マスコミが報じない令和4年度税制改正大綱の中身)
ところでこの大綱において「所要の経過措置」 とあり、廃止後もある程度利用できることが期待されています。
FX・先物の繰越控除制度が現物株と異なる形になりそうな税制改正には疑問です
しかし上記記事で改正条文案を確認した際に判明したことですが、期待を寄せている配当狙い投資家の方には残念ながら恩恵はなく、特定配当等の課税方式に関しては、令和6年度から全く使用できなくなると言わざるを得ません。
経過措置は、下記記事で問題にした、譲渡において生じた繰越損失に関してです。
FX・先物の繰越控除も改正される?(令和4年度税制改正大綱への疑問)
例えば、令和3年分の確定申告、および令和4年度の住民税申告においてこんな所得を申告したことを想定してみましょう。
●譲渡損失:8万円
●配当所得:5万円(所得税は総合課税、住民税は申告分離課税)
令和4年分(住民税は令和5年度)以降繰り越せる損失は、所得税8万円、住民税3万円と変わってきます。
令和4年分(住民税は令和5年度)は何も申告しなかったとして、課税方式統一となる令和6年度においては、繰越損失も所得税の8万円に統一されるのか?という疑問に答えるのが経過措置です。
この場合、令和4年度の住民税課税方式によって決定された3万円を令和6年度も住民税計算上の繰越損失として引き継ぐというのが、改正案の経過措置です。
(総務省サイトの 法律案・理由 より改正案引用)
六年新法附則第三十五条の二の六第四(十一)項の規定の適用については、
令和六年度から令和八年度までの各年度分の個人の道府県民税に限り、同項中「について確定申告書」とあるのは
「に係る確定申告書(当該上場株式等に係る譲渡損失の金額の生じた年が令和二年から令和四年までの各年である場合には、その年の末日の属する年度の翌年度分の道府県民税に係る地方税法等の一部を改正する法律(令和四年法律第▼▼▼号)第二条の規定による改正前の地方税法附則第三十五条の二の六第五(十五)項に規定する申告書(その提出期限後において道府県民税の納税通知書が送達される時までに提出されたものを含む。以下この項において「旧申告書」という。))」と、
「について連続して確定申告書を」とあるのは「に係る確定申告書(当該年が令和三年又は令和四年である場合には、その年の末日の属する年度の翌年度分の道府県民税に係る旧申告書)を連続して」とする。
(ここまで)
従って令和3年度から繰越損失があると、令和8年度までは所得税と住民税で課税される配当所得や譲渡所得が変わってくる場合があるということです。
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ここまでの経過措置案を上場株式では設けておきながら、 先物・FXでも同じように手当しておかないというのは、改正前に保たれていた金融所得課税の中立性・公平性を壊しており、投資家目線で考えてどうにも疑問ですね。投資行動(特に国保加入層に対し)に影響を与えかねません。
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